2013年4月4日、国際自動車株式会社(東京都大田区。以下、会社といいます。)と同社代表取締役を、労働基準法24条1項(賃金全額払いの原則)違反で刑事告訴しました。
労基法24条1項は、使用者に賃金全額を労働者に支払うことを義務づけており、賃金の一部を控除して支払うためには従業員の代表との書面協定等が必要であるとしています。ところが、会社は、この書面協定等に規定がないのに、「通勤会会費」という名目で毎月100円の賃金を賃金を控除していました。全国際自動車労働組合(全労。首都圏なかまユニオン加盟)は、会社に対して、通勤会費の控除をやめることと、過去の控除分を支払うように要求しましたが、会社はこの要求を受け入れません。
本年2月12日、全労委員長が、大田労働基準監督署(以下、労基署といいます。)に対して是正勧告を求めたところ、労基署は是正勧告をしましたが、会社は過去の控除分の支払いを拒否し、同月分の賃金からも控除を継続する意思を示しました。その後、会社と多数派労働組合との間に書面協定が締結されたようですが、全労はその有効性に疑問を持っています。
会社の行為は明らかに労基法24条1項に違反するものであることから、全労委員長は、4月4日、労基署に対して告訴状を提出し、受理されました。私が告訴代理人を務めています。
賃金は労働者にとっての唯一の生活の糧であり、その支払いをしないことは労働者の生きる権利を蹂躙するものです。月100円の賃金であっても、違法な控除がまかり通るなら、他の問題についても労働者の権利は踏みにじられていくでしょう。このたびの刑事告訴は、賃金の違法な控除は絶対に許さないという労働者の意思を示したものです。
会社は法令遵守(コンプライアンス)の観点から、違法な控除について労働者に謝罪し、過去に控除した賃金を直ちに支払い、また、今後、労基法違反により労働者の生活を脅かすことのないように、再発防止措置を取るべきです。
*会社は、Kmホールディングス株式会社(菅原信一社長・東京都港区)を中核とするKmグループに所属するタクシー会社です(同名の国際自動車という会社が都内の他の区にも複数存在します。)。Kmホールディングスは東京を拠点にタクシー、ハイヤー、バスなどの運営を行う持ち株会社で、グループ営業車両数は3,925台(タクシー3,228台、ハイヤー593台、バス104台。業務提携会社を含む。2011年12月1日現在)であり、東京地区においては日本交通と並ぶ最大手の事業者です。
全労は、会社に対して、不払賃金の支払いを求める民事訴訟、元委員長の再雇用拒否を争う民事訴訟を行っており、私はこれらの訴訟代理人を務めています。また、全労は、東京都労働委員会に対して、不当労働行為の救済申し立ても行っています。
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